
人材育成は管理職に求められる責務です。効果的な人材育成を行うためには、部下の業務への習熟度や資質を見極める必要があります。
部下の指導育成は通常、業務を通じたOJT(On the Job Training:職場内訓練)、研修などを中心とするOff -JT(Off the Job Training:職場外訓練)、部下の自発的な自己啓発への支援に大別され、実際にはその大部分はOJTを通じて行われます。つまり、管理職による業務を通じた指導育成手法の良し悪しによって、有能な人材が育つかどうかがほぼ決まってしまうということです。
OJTを実施する際に留意すべきなのが、部下がどれぐらいのレベルまでビジネスマンとして成熟しているかという点です。この点への理解がないと部下が支援を必要としている(つまりOJTの機会)ことが認識できず適切な指導・支援が行えない、あるいは必要以上に部下の業務活動に介入し逆に不信感や反発を招いてしまうというような事態を引き起こしてしまいます。部下がビジネスマンとしてどこまで成熟しているか分類する際には、次の5つのレベルに分けて考えます。
【1.他依存レベル】
業務遂行を管理職・先輩の指示、あるいは業務マニュアルなどによって進める段階。特に重要な判断が必要とされる場合は、管理職が逐一指示を行う必要があります。新入社員など業務知識が浅く、個々のケースへの対応能力が身についていない状態です。管理職による業務支援は3日に1度程度の頻度で行うべきです。
【2.自己確認レベル】
業務を進めていく上での自分の役割が理解できているレベルです。基本的な業務に関しては任せられる状態です。チームのメンバーとして同僚との信頼関係も構築されています。このレベルに達した部下に対しては、部下からの支援依頼があった際に適切なアドバイスや情報を与え、自分で理解・判断をさせるよう心がけます。
【3.自己許容レベル】
複雑な業務にも十分対応できるチームリーダー的なポジションを占める段階です。新たな業務への取り組みなども過去の経験などを応用して対処できます。相応の自信も持っていますので目標を自ら立てさせ、その実現に対する側面支援を行う形で育成していきます。
【4.自己実現レベル】
自ら業務を設計し、自律的に遂行できるレベルです。次の管理職候補と自他共に認める存在であり、部門内の同僚・部下からの信頼も篤い状況です。このレベルの部下とは業務の方向性や部門目標の達成方法など、より高いレベルでの対話を行うことで成長を促していくことが求められます。
【5.自己革新レベル】
より高い水準へと自己を革新しようとするレベルです。部門が与えられた目標を達成するだけでなく、企業そのものの成長や拡大に関する戦略的な思考が出来る状況であり、能力的には既に管理職レベルに達しています。自律的に成長できる段階であり、上司はその能力が最大限に発揮できるポジションを与える良き支援者となるべきです。
営業担当者に対するOJTとして最も効果が高いのが、顧客ならびに見込み客に対する同行訪問です。対象者としては「他依存レベル」ならびに「自己確認レベル」の部下となります。同行訪問の指導育成上の目的は、(1)上司による模範を示すことと、(2)部下の習熟レベルを探索することにあります。
特に(2)に関しては、部下が客先でどのような営業活動を行っているのか、ニーズ探索の質問法は実践されているか、商品知識は十分持っているかなどを多面的にチェックしていく必要があります。商談を進展させるためのチームセリングとは性格が異なりますので、担当者が抱える最重要案件では指導育成のための同行訪問は行わない方が良いでしょう。なお、チェックリストの実例を表に示しましたので、参考にしてください。
同行訪問実施後は、必ず十分な時間を設けた上で部下と「対話・検討」を行ってください。一方的な指摘や叱責は部下を萎縮させ反抗心を植えつけることはあっても、能力向上につながるような発展性のある指導にはなりません。部下は管理職であるあなたより経験も浅く、未熟であることを忘れてはいけません。
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