最近、マーケティングを考える上でのコンセプトのひとつとして、『シニア・マーケット』という言葉をよく耳にします。事実、わが国は今、急速に高齢化社会に移行しつつあります。2010年で全人口の43%が50歳以上、2030年になると51%と過半数が50歳以上のシニア世代で占められるようになると予想されています。
このような状況の中、従来のマーケティングにおける商品開発コンセプト(特に消費財)のように、流行を産み出す原動力を若年層と規定し、メインターゲットとして考えていくことは難しくなってきています。
シニアという単語は定義が難しい言葉ですが、ここでは欧米などでも最近よく使われている『50+(フィフティ・プラス)』、つまり50代以上で人生の収穫期に入った世代と考えていきます。
これは言い換えれば、人生の過ごし方をあらためて規定しなおす時期を迎える世代、ならびに新しい生き方を選択し過ごしている世代だと考えていただけばよいでしょう。つまり、それまでの会社などを中心とした社会生活や、出産・育児・教育などの子供あるいは家庭を中心とした生活環境から切り離され(あるいは解放され)、社会との関係の持ち方や家庭生活のあり方を再構築した(あるいは再構築の準備を始めた)世代であるといえます。
80年代後半から90年代初頭にかけて流行した『シルバー世代』というものの捉え方との違いは、この『新たな関係の構築という生き方そのもの』に注目している点です。シルバーという言葉には、ともすれば高齢化による身体能力の低下をどのように補うか、定年後の家計を支えるための貯蓄や利殖はどのように考えるべきかというような、どちらかといえばディフェンシブ(防衛的)なモノの考え方が多く見られました。
一方、今言われている『シニア』は積極的に社会と関わっていく、あるいは人生のセカンド・ステージをどのように生きていくかを考えていくというオフェンシブ(攻撃的)な色合いが強くなっています。
シニアを50+と規定すると、2005年現在で全人口の約半数弱になります。シルバービジネスが失敗に終わったものが多かったのは、このマーケットを「年齢層」という1種類の切り口でしかセグメントしなかったものが多かったためです。
周囲の60代以上の人々を見回していただけば判ると思いますが、かつての「熟年・高齢者」というイメージにそっくりそのまま当てはまるのは、ほんの少数ではないでしょうか?また、シニアといっても全てがいわゆる「団塊の世代」ではありません。例えば50代前半はむしろ「反・団塊の世代」とでもいうべき「しらけ世代」といわれた人々ですし、60代前半は第二次世界大戦直後に幼児期を過ごした世代になります。
また、同年代の男女を比較してみると、女性の方が早く第二の人生に踏み出す傾向が強く、活き活きとしている方が多く見受けられるでしょう。
つまり、シニア・マーケットとは巨大な市場ですが、その実態は非常に細かく細分化されたサブ・セグメントの集合体なのです。この細かくセグメントされたマーケットのニーズを汲み取っていくためには、従来の顧客プロフィールの検討手法に加え、新たな検討のための切り口が必要となります。
全人口の過半数がいずれシニアとなります。つまり、特殊な一部の産業分野だけが対応を迫られるのではなく、ほぼ全産業分野での対応が求められるということです。そう、あらゆるところに事業機会が潜在しているということになります。
シニア・マーケットへの取り組みにあたっては、従来のシルバービジネスのように単純化・画一化した顧客像ではなく、実態に即した複雑かつ多様なシニア像を理解したうえで、自社の得意とする分野で取り組んでいくことが重要です。
必ずチャンスは存在します。